出張の合間に本を読みました。

日常、本を読まない人間です。

 

いや、部屋で本を読む習慣がない。というのが正しい表現。

活字の本を読むときといえば、長距離移動中に限る。

 

仕事の都合上、月一の頻度で航空機や長距離鉄道を使うことがあるため

その時間を利用して、12月は2冊の本を読むことができた

 

下町ロケット

下町ロケット (小学館文庫)

下町ロケット (小学館文庫)

 

 と

 「ルーズヴェルト・ゲーム

ルーズヴェルト・ゲーム (講談社文庫)

ルーズヴェルト・ゲーム (講談社文庫)

 

である。

いずれもテレビドラマ化されている、池井戸潤の作品である。

両方とも500ページ弱で、およそ2時間もあれば読み切ることができるくらいさらっと読める。関西国際空港ー上海浦東空港のフライトはおよそ2時間半であるので、丁度よい。本自体は昨年夏に梅田のブックファーストで買ったものであるが、サンダーバードで読書をするとわたしは酔うため、しばらく積み本として本棚の肥やしになっていた。

 

学生時代は野球部に所属し、今は製造業に携わっている人間として、上記2作品は今やっていることに何かしら活かすことはできないだろうか。という観点で読みました。

 

1.自分たちの技術に自信を持っているか

下町ロケット」「ルーズヴェルト・ゲーム」のどちらも、非常にスカッとする読後感を得ることができる。両者とも、優れた独自技術を持つ中小企業に対し、規模や営業力のある同業の大企業たちにその技術を奪おうと(主に金銭面で)いじめられるが、最後は持ち前の高い技術力で見返す。という構造になっている。

 

設計・開発職の人間として、優れた独自技術で相手を負かすというのが非常に気持ちの良い話で、どちらも職人気質である技術者たちが自分たちの技術力に自信をもって開発に臨んでいる姿は、あこがれる。

私の所属する組織はその業界で一定のシェアはあるが、トップメーカーではない。そのため、どうしても他社の優れたところを見がちであるが、今一度自分の組織のもつ独自技術の優位性を見出し、次の製品開発に活かせるようにしたいと思う。当たり前だが、会社としては、市場のニーズ、自社のシーズ技術を持って開発テーマが決めているはずなので、なぜこのテーマが必要なのか、というのを今一度考えたいと思う。

 

2.やりたいことだけをやっていないか

下町ロケット」では、中小企業ながら大企業並みの予算を投じて、ロケットエンジンの要素部品の開発を行っていて、それは会社のカネ事情を圧迫している。目先の経営状態も危ないというのに、売れる見込みのないロケットエンジンの開発ばかりしている姿は、経理や営業からすれば、本当に面白くないだろう。「ルーズヴェルト・ゲーム」では、大規模なリストラを実行する中、年間数億の経費がかかる社会人野球チームを存続の是非が最後まで物議を醸した。

 

もちろん、目先の利益だけを追求していくことがいいとは思わないのだが、技術開発において「お前なにやってるんだ」という状況を長続きさせることがないようにしたい。新製品の開発ならまだしも、基礎技術開発となると、アウトプットが明確になり辛いので、性能の優位性や、コストメリットを出せるように考えていきたい。

 

 

3.技術者は守られていることを忘れない

両作品とも、他社や銀行との交渉の場に出るのは、社長であったり、経理や営業の人間である。彼らはその交渉の場で時には無慈悲な言葉を浴びせられ、そのたびに苦しい対応に追われている。技術開発の人間は、いくら罵声を浴びせられようが、しょせんは社内の人間からのみである(もちろん、社外からはないとは言わないが、営業からすれば、よっぽど少ないと言えるだろう)

技術の人間は、外部との交渉では、たいていのケースにおいて、ワンクッション置かれた場所にいる。直接攻撃から守られている。ということは、営業にすれば自分たちがフロントに立って交渉するから、技術屋は開発に専念して早くいい商品を世に出してくれること、設計の対応を早くすることが求められている。と思わないといけない。早くできないのであれば、いつまでにできるかというのを明確にしたい。

 

 

4.特許はきちんと書く

技術開発における成果の指標のひとつに、特許の出願件数がある。面倒臭がらずに、きちんと書く。下町ロケットで問題になったのは、その請求項があまりにも限定されている特許の書き方を、同業他社に突かれたということ。実際に、私も同業他社の特許を調べることがあるのだが、正直、誰でも思いつくような特許は、いくらでもある。しかし、ありきたりすぎて誰も出していないようなものは、請求項が非常に多岐にわたることができる。その誰でも思いつくようなありきたりな構造を採用していることが出願者にばれれば、裁判さわぎになりかねない。なので、自分の書く特許は、他社に対して十分なけん制になっているかというのも一つ重要になってくると感じた。

 

 

5.野球っていいよね

私の所属する組織には社会人野球というものは存在しないが、プロアマ問わずスポーツは、見ているだけで面白い。

 

最後適当なのは許して。

 

営業に行かれた技術の先輩が、異動して半年もせずに辞めてしまわれるという報告を聞いて、悲しくなった12月の真ん中。私も、次の二か月で変化が訪れるのでしょうか。